記事一覧へ

クラウドGPUの相場から借り先を絞る公開価格指数の内訳で台数と地域を確かめる

H100の指数3.45ドルの位置と、1.99ドルから6.16ドルまで並ぶ15社の1台あたり価格を一本の軸に置いた図
2026年9月7日のH100指数と内訳15社の1台あたり価格です。色は価格を割った台数を示します。

クラウドGPUの借り先は、公開されている価格指数の内訳を開き、各社の1台あたり価格に付いた台数、地域、GPUの種類を見比べると絞り込めます。2026年9月7日にH100の指数を取得すると値は1台1時間あたり約3.45ドルでしたが、内訳に並ぶ15社の価格は1.99ドルから6.16ドルまで開き、3.99ドルの行は8台まとめて借りる前提の価格でした。指数の作られ方と内訳の読み方を確かめたうえで、1台と8台をそれぞれ100時間借りる試算、契約と時間払いの損益分岐、今後の相場についての筆者の見立てまでを示します。

H100を1台100時間借りる見積もりを頼まれた場面

公開されているAIモデルを自社の環境で動かせるか確かめたいとき、手元のパソコンでは計算能力や専用メモリが足りず、クラウドからGPUを時間貸しで借りる選択肢が出てきます。GPUは大量の計算を同時に進める部品で、AIの学習にも回答生成にも欠かせません。現在よく借りられているのがNVIDIAのH100で、検証を任された開発担当は「まず1台を100時間ほど」という前提で、費用を決める企画担当へ見積もりを出すことになります。

開発担当が各社の料金ページを開くと、同じ「H100 1時間◯ドル」でも、ある社は1.99ドル、別の社は4ドル台、さらに別の社は6ドル台と数字が開いています。どれが標準的な水準なのか、安い数字にどんな条件が付いているのかは料金ページだけでは読めません。ここで取り違えが起きると見積もりの桁が変わります。3.99ドルという行を1台の価格だと思って100時間分の399ドルと報告したのに、実際にはその行が8台まとめて借りる価格で、1台だけなら429ドル、8台なら3,192ドルだった、という食い違いが実際に起こり得る構造です。

この状況で相場の手がかりになるのが、2026年9月1日に公開されたComputable GPU Indexです。Computableという事業者が複数のGPUクラウドの公表料金を15分ごとに集め、GPU1台を1時間借りる米ドル価格へ揃えた参照値として公開しています。Webページで見るほか、アカウントなしで呼び出せる公開APIがあり、対象はH100、H200、B200、B300の4種類です。

以下の数値は、2026年9月6日と9月7日に公開APIから取得した指数、内訳、履歴と、各社の公式料金表を照合したものです。GPUの性能比較と、実際に借りて請求額を確かめる検証は含みません。開発担当は、指数の内訳から候補を数社に絞り、必要台数の構成と付帯費用を揃えた一式の見積もりを企画担当へ渡せるようになります。

指数は各社の時間払い価格を1台あたりへ揃えて中央だけ平均した数字

指数の値は、各社が公表している時間払い(オンデマンド)の価格を1台あたりへ換算し、その集まりから作った一つの数字です。公式の算出方法の文書によると、収集の対象は全体で29の事業者で、H100の指数にはそのうち17社が使われています。機材を自社で持つ直営や提携の社からは最も安い時間払いの掲載1件を採り、複数の出品者が空いているGPUを出すマーケットプレイスからは出品価格の中央値を採ります。8台分の価格しか公表していない社は8で割って1台あたりへ直し、GPUの台数が分からない掲載は1台とみなさず除外する決まりです。

集計では、中央付近の価格だけを平均します。各社は自社の価格と、その価格に過去90日のばらつき(標準偏差)を足した価格と引いた価格の3点を出し、この3点を算出方法の文書は「投票」と呼びます。すべての社の投票を安い順に並べ、各社に与えられた重みで数えて、全体の中央3分の1に入った投票だけを加重平均した値が指数です。最も安い数社と最も高い数社の投票は中央3分の1の外にあるため値へ直接影響せず、1社が3割値上げしても、その社が端にいれば指数はほとんど動かない設計です。対象になるのはH100のうちSXMと呼ばれる接続方式の製品で、PCIe版の掲載は集計から外されています。

2026年9月7日11時(日本時間)の観測では、H100の指数は3.45ドル、安定帯は上下0.55ドルでした。安定帯は、投票の並びで下から25%と75%の位置にある価格までの距離のうち大きい方で、値のぶれ幅の目安として公表されます。値そのものを決めるのは中央3分の1の投票で、安定帯は値を決める範囲ではありません。17社のうち価格を採用できたのは15社で、1社は取得エラー、1社は集計から一時除外されていました。履歴を取ると9月5日から7日までの168回の観測で3.44ドルから3.55ドルの間に収まっており、この期間の相場としては安定しています。

同じ時刻に他のGPUの指数も返ってきます。新しい世代ほど高く、H100はこの4種の中で最も安い位置にあります。

GPU指数(1台1時間、米ドル)価格を採用できた社数
H1003.4517社中15社
H2004.2214社中13社
B2006.569社中8社
B3007.838社中8社

2026年9月7日02:00 UTCの観測です。値は15分ごとに更新されるため、読者が確認する時点では変わっています。

内訳を開くと1.99ドルから6.16ドルまで並ぶ

APIに内訳を付けて呼び出すと、社ごとの1台あたり価格、価格を割った台数、地域、GPUの種類、事業者の形、元の料金ページのURLが返ってきます。9月7日の観測で採用された15社を安い順に並べたのが次の表です。「記載なし」は内訳のその欄が空だったことを表し、その社に地域や種類の情報がないという意味ではありません。空欄の項目は、次の節以降で各社の料金ページから補います。

提供元1台1時間(米ドル)価格を割った台数地域欄GPUの種類欄事業者の形
Lium1.99記載なし記載なし記載なしマーケットプレイス
TensorPool1.991台記載なしSXM直営
Voltage Park1.991台記載なしSXM直営
Massed Compute2.891台記載なしSXM提携
Civo2.991台記載なしSXM直営
Hyperstack3.201台欧州中心SXM直営
Verda3.251台欧州(北欧)SXM直営
RunPod3.491台世界記載なし専門クラウド
Hyperbolic3.58記載なし記載なし記載なしマーケットプレイス
Scaleway3.688台パリSXM直営
Nebius3.851台記載なし記載なし直営
Crusoe3.901台記載なし記載なし直営
Lambda3.998台記載なしSXM直営
DigitalOcean4.411台記載なし記載なし直営
CoreWeave6.1558台北米記載なし直営

最安と最高の比は3.1倍です。同じ観測で指数は3.45ドルなので、相場より1ドル以上安い社が3社、1ドル以上高い社が1社あります。相場と同じ3.4ドル台に価格を出している社はRunPodの1社だけで、指数の値をそのまま出している料金表はどこにもありません。

事業者の形も見ておく必要があります。マーケットプレイスと書かれたLiumとHyperbolicは、複数の持ち主が空いているGPUを出品する場で、出品ごとに台数や場所が違うため、台数欄は空です。同じ形のVast.aiはこの日の集計から除外されており、Together AIは料金ページに3.99ドルとあるのに指数側の取得が失敗して価格なしでした。指数が返ってきても、掲載された全社に当日の価格があるとは限りません。

公開されている算出方法を9月7日の内訳に当てはめて計算し直すと、値を決めていた社が特定できます。前節の「投票」で数えると、中央3分の1に入った投票の価格は3.10ドルから3.79ドルの範囲でした。この範囲には、Hyperstack、Verda、RunPod、Hyperbolic、Scalewayの5社が出した価格そのものと、NebiusとCrusoeがそれぞれの価格からばらつき分を引いて置いた投票(3.74ドルと3.78ドル)が含まれます。この7点の投票(5社の価格と2社の下振れ投票)だけを加重平均すると3.4504ドルとなり、公表値と一致しました。1.99ドルの3社はもちろん、Civo、Lambda、DigitalOcean、CoreWeaveの投票はすべて中央3分の1の外にあり、9月7日の値には直接影響していません。指数3.45ドルの正体は、機材を自社で持つ中堅の直営社が3.2ドルから3.9ドルで出している価格の平均に近い数字だといえます。安定帯の2.90ドルから4.00ドルはこれより広い範囲で、値のぶれ幅の目安として別に読みます。

内訳15社の1台あたり価格を安い順に横棒で並べ、指数3.45ドルの線と上下0.55ドルの安定帯を重ねた図。棒の色は1台の価格、8台の1台あたり、台数なしを区別する
図を拡大図を拡大
2026年9月7日02:00 UTCの観測です。安定帯2.90〜4.00ドルは値のぶれ幅の目安で、帯の中に9社の価格が入ります。値を決めた中央3分の1の投票は本文で説明します。

3.99ドルの行は8台まとめて借りる価格

表の「価格を割った台数」が8台の行は、8台分のサーバー料金を8で割った1台あたりの数字です。Lambdaの料金ページを開くと、H100 SXMの構成に8台、4台、2台、1台の選択があり、8台構成が1台あたり3.99ドル、1台構成は4.29ドルでした。指数は各社の最も安い掲載を採るため、Lambdaの行には8台構成の3.99ドルが入っています。

必要なGPUが1台なら、Lambdaで比べる金額は4.29ドルです。8台構成を1時間借りれば、GPU分だけで3.99ドル×8台の31.92ドルになります。1台あたりで見れば8台構成の方が7%安いのに、支払額は7倍以上違うという当たり前の計算が、料金表の見出しの数字だけを拾うと抜け落ちます。

台数と価格の関係は社によって違います。Civoは1台2.99ドル、8台23.92ドルで、台数を増やしても1台あたりは変わりません。CoreWeaveは8台のサーバー1時間49.24ドルだけを公表しており、8台未満の単位はありません。DigitalOceanは1台でも8台でも1台あたり4.41ドルです。

提供元1台構成の1台あたり8台構成の1台あたり8台構成の一式(1時間)
Lambda(H100 SXM)4.29ドル3.99ドル31.92ドル
Civo(H100 80GB)2.99ドル2.99ドル23.92ドル
DigitalOcean(H100)4.41ドル4.41ドル35.28ドル
CoreWeave(HGX H100)提供なし6.155ドル49.24ドル

2026年9月7日確認の各社公式料金表に基づく算術比較で、税は含みません。付属するCPU、メモリ、保存容量は社と構成で異なり、たとえばLambdaの1台構成にはCPU26コアとメモリ225GiB、8台構成には208コアと1,800GiBが付いています。

8台構成には8台構成に合う仕事があります。大きなモデルを1台の専用メモリに載せられない場合や、学習を短時間で終えたい場合は、8台を高速な接続でつないだ構成が比較の単位になります。先に必要台数を決め、同じ台数の構成同士で1台あたりと一式を並べると、初めて価格が判断に使えます。

地域とGPUの種類で同じH100の中身が変わる

内訳の地域欄には、Hyperstackが欧州中心、Verdaが欧州の北欧、Scalewayがパリ、CoreWeaveが北米と書かれ、残りの社は記載なしです。日本の地域を示す行は一つもありません。学習用のデータを日本から送る、社内の利用者が日本から接続する、データを国内に置く決まりがある、といった条件があるなら、地域欄が記載なしの社も含めて、どの国のデータセンターで借りられるかを料金表の先で確かめる必要があります。

GPUの種類欄も同じH100の中身を分けます。NVIDIAの公表仕様では、H100 SXMはGPU専用メモリ80GB、メモリの読み書き速度3.35TB/sで、複数台をつなぐNVLinkという接続を持ちます。PCIe版は同じ80GBでも読み書き速度が2TB/sにとどまり、NVL版はメモリ94GBで3.9TB/sです。指数はSXM版だけを集計しているので、料金ページでより安いPCIe版を見つけても、指数の値と同じ土俵にはありません。

料金ページには実際に両方が載っています。HyperstackはSXMが3.20ドル、PCIeが2.50ドルです。RunPodはPCIe版の共有環境1.99ドルからSXM版の専用環境3.49ドルまで6段階あり、指数に採られたのは3.49ドルでした。同じ社の同じH100でも、種類と提供形態で1.5ドル以上の幅があります。1台で文章生成を試す仕事ならPCIe版で足りることが多く、複数台で学習を回すならSXM版の接続が効きます。安い行を見つけたら、どの種類の価格かを先に確認してから候補に入れると、後で比較をやり直さずに済みます。

指数に入らない料金を見積もりへ足す

指数の値に採用されるのは時間払いの掲載価格だけです。中断される代わりに安いスポット価格や、数か月から数年の利用を約束する契約価格も記録はされますが、値の計算には入りません。Nebiusは時間払い3.85ドルに対して中断あり2.15ドル、Civoは36か月契約で2.49ドル、DigitalOceanは12か月予約で3.26ドル、CoreWeaveはスポットが8台49.24ドルに対して19.71ドルです。利用期間を約束できる仕事なら、料金表に指数より安い数字が並んでいて不自然ではありません。

GPUの時間料金の外側にも費用があります。見積もりの前に確認する項目は、保存領域、税、課金の単位、通信、空きの5つに分かれます。

項目確認できた例(2026年9月7日)
保存領域Lambdaは永続保存1GBあたり月0.20ドル、RunPodはネットワーク保存1GBあたり月0.07ドル、Nebiusは共有ファイル1GiBあたり月0.08ドル
税LambdaとNebiusは税別と明記。さくらインターネットは税込表示
課金の単位Hyperstackは分単位、さくらインターネットの高火力DOKは秒単位。時間単位の社では短い実行でも1時間分かかる
通信CoreWeaveは外向き通信を無料と明記。社によっては別料金
空きTensorPoolは通常枠が埋まると別の高い供給枠を提示すると説明。掲載価格と借りられる価格は一致しないことがある

保存領域は見落としやすい項目です。RunPodは料金ページで、計算機を止めてもボリュームの料金は続くと説明しており、他社でもモデルやデータを置いた領域を消さない限り月額が続くのが通常です。使い終わった計算機と保存領域をいつ削除するかを、費用を管理する企画担当と先に決めておくと、翌月の請求で驚かずに済みます。

国内の料金表も同じ枠で並べる

国内の料金表は、内訳と同じ「1台あたり1時間、割った台数、税、付帯」の枠で読むと海外の候補と並べられます。指数に日本の事業者は含まれていないため、この読み替えは見積もりを作る開発担当の手作業になります。さくらインターネットの高火力VRTは、H100 SXM 80GBを1台、CPU24コア、メモリ240GBの仮想サーバーが時間額990円(税込)です。同社が2026年1月13日に提供を始めた高火力DOKのH100 8GPUプランは、8台と160vCPU、メモリ1,760GBを含むコンテナ実行環境が0.83円/秒、1時間あたり2,988円(税込)で、1台あたりに直すと373.5円になります。

2026年9月1日の参考為替159.975円を1ドル160円と丸めると、指数の3.45ドルは約552円、VRTの990円は約6.19ドル、DOKの1台あたり373.5円は約2.33ドルに相当します。1台で借りるVRTは指数より高く、8台で借りるDOKの1台あたりは指数より安いという、Lambdaの4.29ドルと3.99ドルの関係と同じ構造が国内にもあります。VRTは仮想サーバーで起動ディスクを別に契約し、DOKはコンテナ実行環境で提供形態が違うため、この2つの数字を同じ製品の値引きとして読むことはできません。

さくらインターネットの料金表構成1時間の料金(税込)1台あたり1時間1ドル160円での概算
高火力VRTH100 SXM 1台の仮想サーバー990円990円約6.19ドル
高火力DOKH100 8台のコンテナ環境2,988円373.5円約2.33ドル

VRTには6か月契約で月365,750円、12か月契約で月346,500円の料金もあり、これは指数に入らない契約価格にあたります。国内の料金表を読むときも、時間払いか契約か、税込か税別か、保存領域が含まれるかを海外の候補と同じ列に書き出すと、比較の途中で単位がずれません。

試算で見る 相場と支払額の差が開く場所

冒頭の「1台を100時間」という前提で、指数と各社の価格に同じ時間を掛けると、差がどこで開くかが見えます。次の表は2026年9月7日の公表価格にGPUの時間料金だけを掛けた試算で、保存領域、通信、税は含みません。円はさくらインターネットの税込価格をそのまま使い、米ドル換算は1ドル160円です。

借り方指数どおり海外で最も安い候補海外で最も高い候補国内の候補
1台×100時間345ドルTensorPool 199ドルDigitalOcean 441ドルさくらVRT 99,000円(約619ドル)
8台×100時間2,760ドルCivo 2,392ドルCoreWeave 4,924ドルさくらDOK 298,800円(約1,868ドル)

1台100時間では、海外候補の最安と最高の差が約240ドル、国内のVRTまで含めても約420ドルです。この規模では、GPUの時間料金より周辺の費用が結果を左右します。たとえばモデルとデータを1TB置いたまま1か月放置すると、Lambdaの保存料金は200ドルで、指数換算でH100を58時間借りる金額に相当します。100時間の検証で保存領域を消し忘れると、GPU本体の費用の6割にあたる額が翌月に加わる計算です。8台100時間になると候補間の差は約2,500ドルまで開き、今度はGPU本体の価格差が周辺費用を上回ります。台数が少ないうちは付帯費用の管理、台数が増えたら本体価格の交渉が効く、と覚えておくと力の入れどころを間違えません。

契約価格と時間払いの損益分岐も計算できます。さくらVRTの12か月契約は月346,500円で、時間額990円で割ると月350時間です。毎月350時間、稼働率にして48%以上使う見込みがあれば契約の方が安く、検証段階のように月数十時間で終わる使い方なら時間払いが安く済みます。Civoの36か月契約は1台2.49ドルで時間払いの2.99ドルより17%安いものの、3年間の拘束が付きます。後述するようにH100の時間払い価格には下がる圧力がかかっているため、3年契約の割引率が3年分の値下がりに勝つかどうかは、履歴の値動きを見て判断する必要があります。

為替の影響も相場のぶれと比べると位置づけが分かります。1ドル160円が150円になると、指数3.45ドルは552円から518円へ約6%下がります。一方、9月7日の安定帯は上下0.55ドルで、指数に対して16%の幅です。円建ての見積もりでは為替を気にしがちですが、相場そのもののぶれ幅の方が為替の変動より大きいという順序を、企画担当と共有しておく価値があります。

世代間の比は別の判断材料になります。同じ時刻のB200の指数は6.56ドルで、H100の1.9倍です。ここからは筆者の計算に基づく見立てですが、自分たちの処理でB200が1時間にH100の1.9倍を超える仕事をこなせるなら、時間単価が高くても仕事あたりの費用はB200の方が安くなります。性能の比は処理の種類とモデルの大きさで変わるため、ここでは断定せず、時間単価の比だけを前提として置きます。

この先の相場と指数の使われ方

ここからは筆者の見立てです。各段落の前半が公表資料で確認できた事実、後半がそこから先の予測にあたります。

指数の役割は、相場を眺める道具から取引の基準へ広がるというのが筆者の予測です。Computableの利用条件では、指数の値を決済や金融商品の構築に使う場合に別契約を求めており、算出方法の文書も「売り手と買い手の双方が決済に使える一つの参照価格」を目標に掲げています。電力や燃料と同じように、GPUの時間が指数に連動した価格で取引される準備が整いつつあるということです。買い手にとっての変化は、「指数から◯%引きで3か月」のような条件が交渉の土台になり、各社の料金ページの数字を個別に比べる作業の比重が下がることだと予想します。

調達の作業自体も自動化されると見ています。Computableはアカウントなしで使えるAIエージェント向けの接続口(MCPサーバー)を公開しており、AIエージェントが指数と内訳を読める状態です。この記事で示した「内訳を開き、候補を絞り、料金表へ戻る」という手順は、開発担当が台数、地域、GPUの種類、予算を渡せば、AIエージェントが各社の料金ページまで巡回して一式の見積もり表を返す形へ移っていくでしょう。開発担当には条件の設定が、企画担当には空きや契約条件の最終確認が残ります。

H100の時間払い価格には、下がる方向の圧力が続くと予想します。同じ時刻にB200が6.56ドル、B300が7.83ドルの指数を持ち、H100は4種の中で最も安い層にある状態です。新しい世代の供給が増えるほど、大規模な学習の需要は新世代へ移り、H100は推論や小規模な学習の用途で価格を競う立場になります。この見立てが当たるなら、3年のような長い契約で今の価格を固定する判断は慎重になるべきで、契約期間を短くして指数の履歴を四半期ごとに見直す買い方が合理的です。

指数の作られ方と実際の需要のずれは、参照値の分化を招くと考えています。現在の指数はSXM版と8台単価に寄っており、1台のPCIe版やNVL版で推論を回す買い手の価格とは一致しません。RunPodの1.99ドルからHyperstackの2.50ドルまで、PCIe版はすでに別の価格帯を形づくっています。用途別、台数別、地域別の参照値が求められ、指数側も複数の系列へ分かれていくと予想します。

国内については、円建てで日本の地域に限った参照値がまだ存在しません。さくらインターネットのように時間払いの公表料金を持つ国内事業者が増えれば、本記事と同じ方法で円建ての参照値を作れます。それまでは、内訳と同じ枠に国内の料金表を手作業で並べる工程が残ります。

内訳から候補を絞る手順

指数を見積もりに使う順番は、値を見る、内訳を開く、候補を選ぶ、料金表へ戻る、一式で見積もる、の5段階です。

  1. 指数の値と観測時刻を確認し、自社が想定する価格帯の位置を知る。2026年9月7日のH100なら3.45ドルで、上下0.55ドルの幅がある。
  2. 内訳を開き、価格を割った台数、地域、GPUの種類、事業者の形を見る。台数なしのマーケットプレイスと、地域や種類が条件に合わない社をここで外す。
  3. 残った社から、必要台数の構成を公表している数社を候補にする。1台で足りる仕事なら8台のみの社は候補から外れ、8台必要なら1台構成の安さは判断材料にならない。
  4. 各社の料金表へ戻り、必要台数の構成、時間払いか契約か、GPUの種類、地域を揃えて1台あたりと一式の料金を書き出す。
  5. 保存領域、通信、税、課金の単位、空き状況を各社で確認し、想定する利用時間を掛けて一式の見積もりにする。

2の段階で使う内訳は、Computableの公式Quickstartにある内訳付きの呼び出し例で取得できます。APIを呼ぶのは開発担当の役割です。内訳の表と元URLを受け取った企画担当は、コマンドを使わずに元URLの料金ページを開き、必要台数の構成の1台あたり価格、一式の価格、税の扱い、保存領域の料金を表の列へ書き写せば、同じ見積もり表を完成できます。

すでに借りたい地域や必要台数が決まっているなら、最初から候補社の料金表を比べた方が早い場合もあります。モデルを自分たちで管理する予定がなく、AIへ文章を渡して回答だけを受け取りたい仕事なら、モデルAPIや完成したAIサービスの料金を調べる方が近道です。AWS、Google Cloud、Azureは指数に含まれず、2026年9月7日時点でH100の時間払いを8台構成のサーバー単位でしか提供していません。1台で足りる仕事では候補になりにくく、8台が必要な仕事で候補に入れる場合は、各社の料金表で一式料金を別に確認します。

公開指数の価値は、正しい価格を一つ教えることより、内訳に台数、地域、種類、元URLが付いていて、各社へ聞く前提を揃えやすいことにあります。相場より安い行を見つけたときは、まず台数なしの市場価格か、種類や地域が違うのかを疑い、それでも残った社だけを料金表で確かめる方が、安い順に問い合わせるより早く候補が固まります。GPUを借りる開発担当は、一社の見積もりに「台数」と「一式料金」の二列を足すところから始めると、企画担当と比べるべき金額がはっきりします。

この記事で使った指数の最新値と各社の内訳は、常設ページ「クラウドGPU価格インデックス」で週に一度更新しています。記事の数字が古くなったときは、そちらの表を同じ読み方で確かめてください。

指数の値の確認、内訳の確認、候補の絞り込み、料金表への照合、一式の見積もりの5段階を上から下へ並べ、内訳と候補の段階で外す条件を添えた図
図を拡大図を拡大
指数は入口で、契約額は各社の料金表と付帯費用を揃えた一式で決めます。
参照リンク19件
  1. ComputableGPU Index(リポジトリ、利用条件)
  2. ComputableMETHODOLOGY(算出方法)
  3. ComputableCHANGELOG(2026年9月1日公開)
  4. ComputableQuickstart(内訳付きの呼び出し例)
  5. ComputableAPI H100 latest(2026年9月7日02:00 UTC観測)
  6. ComputableAPI H100 history
  7. LambdaGPU pricing
  8. CivoPricing
  9. CoreWeavePricing
  10. DigitalOceanGPU Droplets pricing
  11. HyperstackGPU Pricing
  12. RunPodPricing
  13. NebiusPrices
  14. TensorPoolPricing(料金文書)
  15. Together AIPricing
  16. NVIDIAH100 Tensor Core GPU(仕様)
  17. さくらインターネット高火力 VRT 料金
  18. さくらインターネット高火力 DOK H100 8GPUプラン提供開始(2026年1月13日)
  19. OANDA Japan米ドル/円 過去レート 2026年9月1日

2026年9月7日時点の公式資料を確認しています。仕様は更新される可能性があります。

この記事はここまで056

この作業を終える便利ツール

登録は要りません。ファイルも文章もブラウザの中だけで処理し、外へ送りません。

AI API料金計算料金を計算する

次の記事

AIにWebページの見た目を伝える Refero Stylesの指示書を使ってみた

関連記事

クラウドGPUは1時間いくら L4からH100まで借り先別に10時間の試用予算を出す

AI向けGPUの選び方 演算性能よりHBM・接続・ソフトウェア・電力を見る

AI半導体の供給不足を読む CoWoSとHBMのどこが詰まるか